「いつか自分の手で、理想のかばんを作りたい!」
そう思ったのが、私の革細工(レザークラフト)の始まりでした。 しかし、いざ始めようとしたとき、最初にぶつかったのが「何から揃えればいいのか、まったく分からない」という壁です。
当時の私は、とりあえず初心者用のセットを買い、足りないものや気になるものを買い揃えていきました。しかし、それが大きな間違いでした。結果として、作りたいものの方向性が定まらないまま道具だけが増え、一度も使わない道具が引き出しで眠ることになったのです。
このブログ記事は、そんな私の「遠回りの経験」を反面教師に、これから革細工を始める方が無駄な出費をせず、最短距離で楽しめるようになるためのガイドです。
道具を買い揃える前に知っておくべき「革細工のジャンル」
初心者がやりがちな失敗、それは「作りたいものを決める前に、道具をすべて揃えようとすること」です。
実は革細工には、以下のようなジャンルが存在します。
- バイカー系(無骨で厚い革、スタッズなど)
- アメカジ系(経年変化を楽しむ、カジュアルなデザイン)
- トラッド/クラシック系(ビジネス用品やフォーマルな鞄)
- ミニマル系(シンプルで現代的なデザイン)
- ウエスタン系(カービング装飾など)
重要なのは、ジャンルごとに扱う革の種類・厚み・仕上げ方法が異なり、必要な道具も変わるという点です。
例えば、繊細なビジネスバッグを作る道具と、極厚のバイカーズウォレットを作る道具は必ずしも同じではありません。まずは「自分が何を作りたいか」をイメージすること。道具選びはその後で十分間に合います。
初心者が最初に揃えるべき「最低限の道具」6選
結論から言えば、革細工は最低限の道具さえあれば始められます。 最初からプロ仕様の道具を揃える必要はありません。「作りながら、必要になったら買い足す」。このスタンスが、長く楽しく続けるコツです。
ここでは、どのジャンルを目指すにしても共通して使う「6つの基本道具」を厳選して紹介します。
1. カッター(革の裁断用)
革を裁断するための最も基本的な道具です。寸法通りに切れるかどうかが、作品のクオリティを左右します。
おすすめ
オルファ「別たち」(56Bなど)
私が最初に使ったのもので、非常に良い選択でした。初心者のうちは高価な「革包丁」は必要ありません。まずは扱いやすいカッターで十分です。
選び方のポイント
- 刃がしっかり固定され、ブレにくいもの
- 替刃が入手しやすいもの
- 力を込めやすいグリップ形状
2. 定規(ステンレス製)
「定規なんてどれでもいい」と思っていませんか? 独学で始めた私は、定規を使うという発想が無く、フリーハンドで切るのが当たり前だと思っていました。しかし、1年後に定規を使ってみたら、あまりの仕上がりの違いと楽さに衝撃を受けました。
- おすすめ: ステンレス製の30cm前後のもの
- 選び方のポイント:
- ステンレス製を選ぶ: カッターの刃が当たっても定規が削れないため。
- ある程度の重さがある: 革の上でズレないために重要です。
- 安全面: 定規がズレると指を切る大怪我につながります。しっかりしたものを選びましょう。
3. 菱目打ち(縫い穴を開ける道具)
革細工特有の道具です。革は硬いため、針を通す前にあらかじめ穴を開けておきます。
- 必要な本数: 最初は「2本目(2本刃)」があればなんとかなりますが、「1本目」と「2本目」があると便利です。予算があれば「4本目」もあると直線が楽になります。
- 選び方のポイント:
- 一般的なピッチ(3mm〜4mm程度)のもの
- 刃先がきれいに揃っているもの
4. 木槌(打刻用ハンマー)
菱目打ちを叩いて穴を開けるために使います。
※注意: 鉄の金槌(ハンマー)は絶対に使わないでください。菱目打ちの持ち手が変形したり、打刻音が大きくなりすぎたりします。
- 選び方のポイント:
- 木製、またはナイロン製(ラウンドモールなど)
- 適度な重さがあり、振ったときに安定するもの
5. 針と糸(手縫い用)
家庭科で使う裁縫セットの針とは異なります。革専用のものを用意しましょう。
- 針: 革用の「丸針」。先端が尖っておらず丸くなっているので、革の穴を通す際にスムーズで、かつ指を刺しにくくなっています。
- 糸: 初心者は「ロウ引き糸(ワックスコード)」が圧倒的におすすめです。摩擦に強く、糸の始末も簡単になります。
6. ゴム板(作業用下敷き)
菱目打ちで穴を開ける際、机や道具の刃先を守るための「縁の下の力持ち」です。カッターマットだけで代用すると、貫通した菱目打ちの刃が痛みやすいため、専用のゴム板を一枚用意しましょう。
最初は「買わなくていい」道具たち
「形から入りたい」という気持ちもわかりますが、以下の道具は初心者の段階では急いで買う必要はありません。
- 高級な革包丁: 研ぎ(メンテナンス)の技術が必要です。最初はカッターで十分です。
- 刻印・スタンプ類: デザインの方向性が決まってからで遅くありません。
- 電動工具・大型機材: 音の問題や場所の問題があります。
- プロ向けの高価なフルセット: 使わない道具が含まれている可能性が高いです。
Q. 「スターターキット」は買うべき?
Amazonなどで売られている「初心者セット」についての考え方です。
- 向いている人:
- とりあえず一度、革細工の雰囲気を味わってみたい
- 作るものは何でもいいから、体験してみたい
- 道具選びの手間を省きたい
- 向いていない人:
- 「こういう財布が作りたい」と目標が決まっている
- 道具を長く大切に使っていきたい
- 無駄な出費を1円でも抑えたい
私自身の経験から言うと、「最低限の道具を揃える + 必要に応じて買い足す」という方法が、結果的に一番無駄がなく、上達への近道だと感じています。
まとめ:道具は少なく、経験は多く
革細工を始めるのに、最初から完璧なアトリエを用意する必要はありません。
- まずは最低限の道具(カッター、定規、菱目打ち、木槌、針糸、ゴム板)だけで始める。
- 簡単な小物を作ってみる。
- 「ここをもっとこうしたい」と思った時に、必要な道具を一つ買い足す。
これが、革細工を長く、深く楽しむための秘訣です。 まずは小さなキーホルダーやコースターから、あなたの革細工ライフをスタートさせてみませんか?

コメント